土を耕す?耕さない?「不耕起栽培」の秘密
最近嬉しいことに、私が挑戦している「無肥料、無農薬、不耕起」で行う協生農法に興味を持っていただく方々が増えてきたので、今日は一般的に理解しにくい「不耕起栽培」とは何なのか、その仕組みとメリットについてご紹介します。
また、自然農法の中には不耕起でなくとも、無肥料無農薬で野菜を育てている方はたくさんいらっしゃいます。
あくまで「不耕起という選択肢もある」とご紹介しているだけですので、予めお含みおきくださいませ。
〈スポンサーリンク〉
不耕起栽培とは?
そもそも不耕起栽培とはどんなものなのか、それは字のごとく「耕起をしない」、つまり鍬や耕運機を使わず土壌を掘り起こさずに行う栽培方法のことです。
●農業をするのに土を耕さないってどういうこと?
●畑作は土を耕すのが常識!そうじゃないと野菜はできない!
そう思われる方も多いかと思います。
では、逆にどうして土を耕す必要があると思います?
耕す目的としては
- 土を柔らかくし、通気性や水はけを良くするため
- 野菜の生育に邪魔な雑草を除去するため
- 肥料を土に混ぜ込むため
などが主な理由として挙げられます。でも果たして、そんな環境をわざわざ人間が整えてあげる必要があるのでしょうか。
厳密にいうと、不耕起栽培といっても結果として土は耕しています。
ただ耕すのは人間ではなく、「植物の根やミミズ、そして微生物」であるということだけ。
根を伸ばして土を耕す「植物」
植物は地中に縦や横、網の目状に根を伸ばし成長していきます。
そして根が枯れると、そこにはトンネルのような無数の空洞として残ります。この「根を張って枯れる」という行為が「土を柔らかくし、通気性や水はけを良くする」のと同じ効果を生んでいます。
レタスやほうれん草などは、根を横に浅く伸ばす「浅根性」。インゲンやエンドウなどの豆類は、根を地中深くまで伸ばす「深根性」。
不耕起栽培では、1つの畝に単一栽培ではなく、多品目の野菜を植えることが良いとされていますが、こうして野菜にもそれぞれ個性があって根の伸ばし方が違うため、たくさんの種類の野菜を育てた方がより多様な土の耕し方ができるというわけですね。
不耕起で行うと野菜の他にも わんさか雑草も生えていますから、さらに複雑に土を耕すことができているというわけです。
邪魔な雑草は「大切なパートナー」
畑の雑草は「邪魔」ではなく、非常にありがたい「有機物資源」。
根を張る行為は土を耕すことにしもなりますし、土壌の表面を草で覆うことで土の乾燥防止になるのはもちろん、雨により土の養分が流れ出してしまうことを予防したり、刈り取った草を土壌の上に残しておくことで緑肥として有機物を提供することになります。
つまり「野菜の生育に邪魔な雑草を一掃する」とは真逆の意味合いになります。野菜にとって雑草は邪魔な存在などではなく、むしろ環境作りを手伝ってくれる大切なパートナーということになります。
慣行の耕運栽培では「有害な存在」という雑草も、不耕起栽培になると「土を豊かにしてくれる存在」という価値観に変わります。
365日、除草作業に躍起になって「また雑草が生えてきた。邪魔で憎たらしいな!」と考えながら過ごすよりも、「また雑草が生えてきた。一生懸命土作り頑張ってくれてるな!」と心穏やかに過ごす方が楽に生きられると思うのですが、いかがでしょうか。
もちろん、生えっぱなしにしておくと野菜の生育を妨げてしまうこともありますので、草を根っこから取り除くのではなく、草丈を低めに管理するなどの調整は必要だと思います。
微生物とミミズが土を肥沃にする
植物の枯れた根や刈った後の敷き草などの有機物を餌として分解するのが「微生物」。枯れた後に残る空洞は微生物の住処にもなります。
微生物が増えれば増えるほど分解速度も上がるので、より多く腐葉土を作り出すことができます。
養分の多い腐葉土を餌をするのが「ミミズ」。土の中の有機物を食べることで、糞などの養分をもたらしてくれます。
ミミズの死骸は微生物が餌として分解、さらに微生物の死骸も有機物として分解されていくので、どんどんふかふかの柔らかい土に変わっていく。
自然の野山の土が、耕してもいないのに柔らかい理由は、こうした自然界の物質循環によるものなんですね。
こうした様々な生き物たちの命の連鎖にお任せすれば、人間が手を加えなくても土を耕すのと同じような効果をもたらしてくれるというわけです。
不耕起栽培は、植物の根とミミズなど土壌に住む小動物、そして微生物にお願いし、自然界の物質循環に任せようという栽培方法です。
耕運機や鍬で土を掘り起こすという行為は、せっかく植物が作った土のトンネルを壊し、土をむき出しにして微生物の隠れ場を奪い、土に栄養をもたらすミミズの体を切断するということにつながります。
土に栄養がもたらされなくなってしまった結果、人間が肥料を施さなければいけなくなり、雑草を取り除いた結果、雨によって養分が流されやすくなり、追肥などより多くの肥料を入れなければならない。
しかも、畑全面に撒かれた肥料のうち、実際に効果があるのは植物が根を張った周囲のほんの一部だけ。その大半は雨によって地下に流れ込み、水を汚染したり、亜酸化窒素というガスに変わりオゾン層を破壊します。
土を耕すことから連想していけば、なんと環境汚染につながっていってしまう可能性があるんです。
このことから不耕起栽培は環境を守る地球に優しい農法であるとも言えるのではないでしょうか。
まとめ
と、ここまで不耕起栽培の仕組みやメリットばかりをお伝えしてきましたが、もちろんデメリットもあります。
一番大きいのは土ができるまでに何年も時間がかかるということ。上記のような自然に任せた土作りは4年〜8年はかかると思います。ただし、一度畝を立てて完成してしまえば完全な土壌のシステムが永年続くわけですし、待つのも苦ではないのではないでしょうか。
また、耕作放棄地などすでに土壌のシステムが完成している場所で始めれば今すぐにでも野菜を育てることができると思います。
2つ目は慣行の耕運栽培よりも出来上がった野菜が小さいということでしょうか。
厳しい自然環境の中で力強い個体だけが発芽して生き残っていくので、成長する過程で弱い個体は淘汰されていきます。
その代わり、生き残った野菜は小さいながらも、それはそれはエネルギーに満ち満ちていて、野性味溢れる濃い味となります。 甘やかされて大きく肥大した野菜と、自力で育ちギュッと濃縮された野菜の違いでしょうか。
ちなみに、不耕起栽培をもっと知りたいという方は、下記の本にもめちゃめちゃ詳しく載っていますのでこちらも合わせてご覧くださいね。
<スポンサーリンク>
今日、舩橋さんや協生農法やむーさんを知って、実践されている方を検索してこちらを見つけました。現状、自分は実践が難しい、六本木ヒルズの実践場ならジョギングで見に行けるという都会暮らしですが、大変興味深く拝見しました。きっと本来の野菜や果物は小さくて、スーパー等では肥料等で大きく引き伸ばされたものを買っているのかなと思いました。農家・農業となると、単一野菜を種類ごとにある量収穫、出荷するのが難しそうですが、すでに生協等では「有機野菜セット」のようなお任せアソートも一般化しているので、協生農法の産物のパワーがわかってきたらブームになる気がします。時々、覗かせてくださいませ。
ミナコさん
ブログをご覧いただき誠にありがとうございます!
そうですね、本来の野菜は1つ1つが個性的で大小サイズもバラバラです。
私のダイコンも小指くらいの大きさもあれば、スーパーより大きな個体もあります。
ムーさんのエネルギー論でいうとサイズは違っても摂取できるエネルギーは同じなので、
私は特に大きさにこだわることはありません。
(大きいものが取れるともちろん嬉しいですが、小さくても問題ありません)
ミナコさんがおっしゃる通り、もし販売を目的とするのであれば単一野菜を種類ごとに出荷するのではなく、
その時期ごとに取れる種類をセット販売する方が協生農法には向いていると思います。
もしくは収穫などの「体験」を売るかですね。
これからも細々と発信していきますので、またブログに遊びに来てくださいね!