農業に革命を起こす!?協生農法
このブログのテーマでもある「協生農法」は、一言でいうと「生物多様性の循環を利用した農法」です。要は生き物たちの力を借りて野菜を作ろうという考え方です。
それでは具体的に従来の農法と何が違うのかご紹介していきたいと思います。
<スポンサーリンク>
スタッフは「雑草と虫と鳥」
協生農法は基本的に「無農薬」「無肥料」「不耕起」で行います。
これだけだと少し農業を知っている人なら、「なるほど自然農法なのね」と思われると思います。しかし、従来の自然農法では
- 殺虫剤は使わないけど、ある程度の虫は手で除去する
- 除草剤を使わない代わりにビニールマルチをかける
など、どうしても雑草や虫は敵という意識を持っていることが多いです。(もちろん中には草を完全に除去せずに野菜を育てていらっしゃる方もいらっしゃいます。)
しかし、協生農法では雑草や虫や鳥は畑を作ってくれるスタッフという「仲間」の意識を持っているため、絶対に除去をすることはありません。むしろ彼らがいなければこの農法は成り立ちません。
では、そろそろ協生農法の畑がどんな場所なのか、ご覧いただきましょう。何が違うって下の写真をご覧いただければ一目瞭然。
こちらが三重県伊勢市で協生農法を提唱している大塚隆さん(通称:むーさん)の畑です。
一見、草が伸び放題の耕作放棄地にしか見えませんよね。僕も最初案内していただいた時は何の冗談かと思いました。
でも目を凝らしてよく見ると…
キャベツに
ニンニク
ゴボウにニラ
ミントなどのハーブ類
などなど様々な野菜があることがわかります。
なんと、一反の農地に250種以上の有用植物を育てているんです。あえて様々な植物を混生させることで畑の中に多様な環境を作り出すことで単一栽培に起こりがちな害虫被害や連作障害を防ぐという効果もあります。協生農法は放任ではなく里山のように人と自然が共存して野菜を作り出す菜園ともいえます。
土壌を耕す担当は「植物」
協生農法にとって雑草は野菜と同じくらいとても大切な存在です。それは土を耕してもらうことや土壌の保水力を高めてもらうこと、さらに土を作る微生物を育むなど非常に重要な役割を担ってくれるからです。
- 雑草や野菜などの植物は、土を耕すように地中深く根を張っていきます
- やがて土中で枯れた根は微生物の餌となって分解され、そこに網の目状の空洞ができます
- 根の穴は空気や水の通り道となるほか、ミミズや微生物にとっての住処となることで、徐々に土が団粒化して肥沃な土壌に変わっていきます。
- また、植物が土の表面を覆うことで表土の乾燥を防ぎ、直射日光による紫外線から微生物を守ります
上記のように本来、草を除去することも土壌を耕す労力も必要がないはずなのです。まぁでも、難しいことは考えず、せっかく根や微生物が野菜が育つの土の状態を作り出してくれているのだから、有り難いな、それを崩すと可哀想だなくらいに考えれば良いのだと思います。
肥料を運ぶ担当は「虫や鳥」
- 科学肥料は使わないけど米ぬかや油カスは使う
- 堆肥を発酵させ土に入れる
など肥料についても野菜は人間が肥料をあげないと育たないという考えが一般的だと思います。
もちろん肥料をあげるとムクムクと太く大きくなるのですが、それは「養殖」と同じなのではないでしょうか。自然の野山に目を向けても野菜以外の植物で人間から肥料をもらって育っているものはありません。
人為的に肥料をあげる必要がない「はず」なのです。自然界では、この肥料を渡す役割は虫や鳥が担っています。
しかし従来の農法では農薬で虫を嫌い、鳥避けで追い払うため、肥料が畑に入らず仕方なく肥料を入れなければいけなくなっていると言えます。
協生農法では逆に鳥や虫を集めるため畑の至る所に果樹を植えています。
写真はキンカンの木。これはあくまで鳥や虫のために植えたものです。また、落ち葉はやがて腐葉土となり土つくりにも貢献するというメリットも持っています。
土の中の微生物から草、虫、鳥と畑の中に多様な食物連鎖を作り出すことで、それぞれが優秀なスタッフとなり畑を作ってくれているのです。今まではこれらを全て排除していたわけですから、本当に申し訳ないことをしてきたなと思います。。。
畑を運営する担当は「人間」
人間の役割は畑に生物多様性を作り出すことと、野菜の種を蒔き、苗を植え、収穫することです。
協生農法は混生栽培が基本なので何十種類という様々な種を混ぜ合わせて畑にまいていきます。その中で、密生しすぎた部分を間引きながら収穫するのが仕事。
収穫する代わりに次の種をまいていけば365日、毎日収穫が可能という理想的な畑が出来上がります。
今はこれ、その次はこれと野菜を作るプランニングを考えていくことが知能を持つ人間の最大の役割だと思います。餅は餅屋で生物みんなそれぞれが最大の力を発揮すれば素晴らしい畑が出来上がるのです。
自然本来の「美味しさ」
協生農法の特徴は独特の栽培方法だけではありません。とにかくメチャメチャ美味しいのです。
ブロッコリーやスナップエンドウなど、そのまま生で食べてもものすごく甘い、しかも葉っぱを食べても美味しい!! これには度肝を抜かれました。
一番驚いたのはゴボウ。一般的にゴボウはアク抜きをしないと生食には向かないといわれていますが、生のままバクバクいけます。野菜嫌いの子供でも食べられると密かな人気を集めているそうです
やっぱり人間が手をかけないため、自然本来の味わいというか力強さを感じます。
肥料をやり水をやりと優しく育てた野菜とは味にも違いが出てくるのだと思います。どこか今の教育や子育てにも通じるような気がして心が痛くなります。
優しさとは一体なんなのか考えさせられます。。。
協生農法が過疎化の村を救う!?
今まで読んでいただいておわかりの通り、協生農法はほとんど手間や労力がかかりません。
そのため、土を耕す体力が衰え、泣く泣くやめた高齢者の方でも協生農法なら一生現役で野菜を育てることができます。しかも美味しくて健康的!
この農法が普及すれば、耕作放棄地に悩む山間部の村は活性化できるのではないかと思います。
実際に野菜を作れず生きがいを無くして弱っていった高齢者も身近にいますし、この農法を始めて「こんな楽なら死ぬまで続ける」とイキイキし始めた方も知っています。
また、重機の必要もなく、コストも種や苗代以外ほとんどかからないため、受け入れる側の気持ちさえ変われば十分に産業としても成り立つとも考えます。
というのも、やはり「太く大きく形の良い野菜」という点ではこれまでの農法には到底かないません。その部分を熱心に研究し尽力してきた人類の英知とも言える野菜作りには敬意を払いますし、同じロットをスーパーに流通させるための大量生産は協生農法には向いていないからです。なので従来の農法を否定する気持ちは全くありません。
ただ慣行農業が抱える環境汚染の問題などは無視はできませんし、兼業農家や小規模農家は取り入れる価値がある、未来のある農法なのではないかと僕は信じています。
世界が注目する協生農法
一昨年(2015年)。協生農法を生み出した大塚さんの一番弟子である舩橋真俊さんが、慣行農業により砂漠化してしまった大地が深刻化しているアフリカのブルキナファソという国で500㎡に150種の植物を混成させるという協生農法を実践した所、平均国民所得の20倍にあたる月1000ユーロ(100万円)の収入を得られるほどの生産量を生み出しました。
この結果はアフリカやヨーロッパの国々を驚かせ、現在、砂漠化や食糧問題の解決策の一つになるのではと世界から注目を集めているんです。
まとめ
生物多様性を用いた農法は、全ての生き物を大切にする農法です。そして全ての生き物を大切にすれば環境問題の解決にもつながり地球を大切にすることにもつながってきます。
いかがですか?すごくロマンのある、愛情深い農法だと思いませんか?もし、この農法に関心を持ちご自宅に農地が余っているという方、もしくは慣行農法から切り替えてみようかなと思った方は一度実践してみてはいかがでしょうか。
ちなみに僕もこれから協生農法を始めてみようと思います。このブログでは今まで耕作を放棄していた畑から野菜を収穫できるまでをドキュメンタリーで綴っていきたいと思います。興味がございましらこれからもご愛読いただきますよう宜しくお願い致します。
2017年5月 麦わらドングリ 拝
※私がどうして協生農法に取り組んでいるのか、きっかけをまとめた記事はこちら
<スポンサーリンク>