春と福を招く 「名張の八日戎」知られざるアマテラスとの関係とは
2月7日、8日は名張市民に「えべっさん」の通称で親しまれている蛭子神社の祭礼「八日戎(ようかえびす)」!
商売繁盛や家内安全を祈願、名張に春を告げる風物詩となっています。
名張の旧市街地の中心部、名張川沿いに鎮座するこの神社では、ネコヤナギ(名張川周辺に自生する低木)に大判小判や俵、鯛などをつけた「吉兆(けっきょ)」という縁起物が福娘さん達により授与されます。
関西の今宮戎神社の祭礼では「商売繁盛で笹持ってこい♪」と景気のよい声が響きますが、名張の場合は特にこれといった掛け声は無し。
吉兆を受け取るときに福娘さんから「よう、お参りと」声をかけてもらえるだけです。
まぁ「商売繁盛でネコヤナギ持ってこい♪」だとリズムはかなり取りづらいとは思いますが。。。
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八日戎に欠かせない「ハマグリ」
吉兆のほかにも、もう一つこのお祭りに欠かせないものがあります。それがハマグリ。
蛭子神社に向かう沿道には、祭礼の期間中ハマグリを売っている露店がたくさん並びます。(この2日限定で名張市内のスーパーにもハマグリコーナーが設けられます)
何故山奥の村でハマグリを売っているのかというと、かつてこの場所では「山の幸」と「海の幸」を交換していた市が開かれていたそうで、その名残だといわれています。
海の幸は「ハマグリ」。山の幸は「植木の苗木」です。
四方を山に囲まれた名張。流通が整備された今でこそ生の海産物もすぐ手に入りますが、当時こうした海の恵みは、大変貴重な縁起物だったのでしょうね。
私も物心がついたころから、このお祭りに行ってハマグリを買って帰るのが慣習となっています。
昔、土間にあった石油ストーブの上で酒蒸しにして食べていたのですが、あの美味しさは今でも忘れられません。フライパンで作るのとは、不思議と味が全然違うんですよねー。
最近では外国産のハマグリに変わってしまったために、そう思うだけかもしれませんが・・・。
八日戎とアマテラスの知られざる関係
ちなみに、なぜこの場所でそんな大きな「市」が開かれていたのか。
そこには名張と伊勢神宮内宮の祭神「天照大神(あまてらすおおみかみ)」の深い関わりがあるんです。
かつて垂仁天皇の第4皇女である倭姫命(やまとひめのみこと)は、天照大神から「自分が安住できる場所を探してほしい」という神託を受けます。
倭姫命は天照大神の御杖代(神様の杖代わりとなって奉仕する者)として、大和国から伊賀や近江、美濃、尾張など諸国を巡幸し、その末に伊勢の国で皇大神宮(伊勢神宮内宮)を創建したとされています。
倭姫命は理想的な鎮座地が決まるまで、各地で一時天照大神を遷座させていました。
遷座した場所は「元伊勢」と呼ばれていて、今でも神社として残っているところがあるんです。
その中の一つが、名張市の「蛭子神社」。
「隠市守宮(なばりのいちもりのみや)」として2年間程、この地に宮を構え天照大神を祀っていたと伝えられています。
今でも拝殿には額が掲げられていました。(注・近くの宇流冨志禰神社が隠市守宮という説もあります)
市守神社という名前から、この地で「市」が開かれるようになり、それが「八日戎」として今に伝承されているそうですよ。
まとめ
名張の方でも、まさか八日戎が伊勢神宮との深い関わりがあったとは知らない人も多いと思います。
でも、こうして背景を知ることで、より祭りに深みが増すというか、文化が、自分の町が好きになるような気がします。